2013/01/30

メタンハイドレート開発:推進と規制を別にせよ

【 要点 】

1.日本海側に存在するメタンハイドレート(以下「MH」という)の埋蔵量の調査が開始される。

2.和歌山県沖で、2013年1月28日から3月末にかけて、MH生産実験(フローテスト)が実施される。経済産業省はMHを推進しながら、環境評価も実施している。MHは国産エネルギーにもなるが、危険な代物でもある。経済産業省とは別の役所が規制の役割を負わなければならない。原子力発電所の教訓が生かされていない。


【 ニュース 】

片山さつき議員(自民・参)がTwitterでつぶやいた。(2012/1/29)[1]
第4回資源確保戦略推進議連開催!今日決定の政府案に日本海側表層型メタンハイドレートを三年で佐渡、能登、秋田、山形、隠岐、北海道沖で調査など300億円超!

菅原一秀議員(自民・衆)もブログで書いている。(2013/1/29)[2]
本日、資源確保戦略議員連盟が開催された。会長に古屋圭司拉致担当相、幹事長に新藤義孝総務相で不肖私が幹事長代理で事務局長が片山さつき総務政務官。二人の現役閣僚が一つの議連の会長、幹事長になること自体か珍しい。
野党時代、この議連を発足させたが、経産省やエネ庁は、日本海側のメタンハイドレートの取り組みには必ずしもポジティブでなかった経緯があり、この議連の後押しで少しずつ前進がみられてきた。
あの3.11以来、日本のエネルギー構造は確実に変わった。そして、7兆近い貿易赤字は経常収支を悪化させかねない。それゆえ、自国の自前のガスやオイルの探査と掘削、実用化は急務である。
自身も副大臣という立場と議連の立場と体半分にして取り組んでいく。この議連が鍵を握る。


【 解説 】

1.日本海側に存在するメタンハイドレート

大学や民間の研究所が日本海側でのMHの存在を主張してきたにもかかわらず、政府は太平洋側で調査を実施してきた[3]。自民党議員は昨年(2012年)に資源確保戦略推進議員連盟を組織して、独自の調査を実施してきた青山繁晴氏(独立総合研究所 社長)を講師に招いて運動してきたが[4]、上記の片山議員のTwitterにあるように、今般予算要求したようだ。

太平洋側の南海トラフに存在するのは「深層型MH」であり、海底数十~数百メートルに砂と一緒に存在する。一方、日本海側は「表層型MH」であり、海底数メートルの浅い場所に砂を含まないで存在し、比較的容易に採掘できるとみられている。[5]


2.メタンハイドレートの危険性

メタンハイドレートは、メタン(CH4)が水(H2O)が囲む構造の物質であり、温度と圧力が微妙にバランスがとれ、氷の状態になっている。 もしメタンハイドレートが不安定になり、大量のメタンが大気へ放出されれば、地球温暖化の原因にもなる。「過去にメタン放出という形で汎世界レベルの急激な温暖化と密接に連動していた可能性」があるとのこと。[6]


3.和歌山県で実施されている生産実験

「第1回メタンハイドレート海洋産出試験」は2段階にわけて実施されている。
①2012/2~8:事前掘削作業。MH濃集帯」(MHが集積されている地層)の上部まで掘削する。[7]
②2013/1~3:産出試験(フローテスト)。前年に掘削した井戸を利用して、さらに「MH濃集帯」まで掘削して、海洋における世界初のフローテストを実施するものである。[8]

経済産業省が、石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC)に委託して、JOGMECが石油資源開発を掘削オペレーターに起用して実験を実施している。環境評価などはJOGMECが外部企業に委託している。[9]

この作業が成功すれば、国産エネルギー確保の飛躍につながることは間違いない。しかし、上述したように、メタンハイドレートの生産にはリスクがある。原子力と同様に、国は開発を促進するだけでなく、規制もしなければならないが、現状では、経済産業省がそのどちらも担当している体制になっている。危険であることを指摘しておきたい。


【 参考資料 】

[1] 片山さつき議員Twitter発言
[2] 菅原一秀議員ブログ発言
[3]「日本海に採取しやすいメタンハイドレート 実用化への期待高まる」(2012/11/18)
[4] 新藤義孝議員(自民・衆)のTwitter(2012/8/2)
[5]「日本海で広域調査へ メタンハイドレート開発」(2013/1/10)
[6] 「メタンハイドレートは気候変動の起爆剤? ~海洋堆積物コアの記録から~」(JAMSTEC 内田昌男)
最終氷河期に海底下メタンハイドレート層が崩壊した形跡を下北半島沖で発見-地球規模の気候変動への影響- (国立環境研究所) 
[7] JOGMECプレス発表 2012/2/3
「メタンハイドレート海洋産出試験の開始について」
「メタンハイドレート海洋産出試験 プレス説明会資料」
[8] JOGMECプレス発表 2013/1/29:「メタンハイドレート海洋産出試験(平成 24 年度現場作業)開始」
[9] JOGMECプレス発表 2012/9/26:「メタンハイドレート第1回海洋産出試験のフローテストに関するハザード分析」公募
公募  結果発表 

その他参考資料

新藤義孝議員HP
【動画】日本海表層型メタンハイドレートについて<自民党経済産業部会・海洋ロマン議連・資源確保戦略推進議連合同会議>(2012年11月8日)
「日本海の表層型ガスハイドレート」(松本 良先生資料)①②

-------追記(2013/3/10)--------------------------

否定的な意見 

「メタンハイドレートは資源ではない」 石井吉徳・元国立環境研究所長
【要約】メタンハイドレートは、資源として価値がない。その理由は:
 ①原始埋蔵量は大きいが、広く、薄く分布している(=「濃集」していない。)
 ②普通の天然ガス田と違い固体で存在するため、掘削しても自噴しない。
 ③生産するために必要なエネルギーの方が、得られるエネルギーより大きい。

その他資料
日本近海のメタンハイドレートは資源でない:フェーズ1報告を読んで 田村八洲夫





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