2013/03/27

TPPのISD条項:経済産業省管轄のプロジェクトの障害になる可能性

日本がTPP交渉に参加するにあたり、ISD条項の危険性が危惧されている。経済産業省は自油貿易を促進・拡大する役目なので、ISD条項を受け入れてもTPPに参加したいと考えているだろう。しかし、ISD条項が、同省の重要プロジェクトに悪影響を及ぼす可能性を想定しているだろうか? 


1.ISD条項

投資家-国家訴訟(Investor-State Dispute Settlement)条項とは、外国政府にTPP協定に違反する行為があると想定される場合、投資家(企業)が、外国政府(国家)を訴えることができる規定である。(ISDS条項あるいはISD条項)

米韓FTAの場合、例えば韓国に投資した米国企業が、韓国の差別的な扱いにより損害を受けたとする。米国企業は、世界銀行グループの機関である国際投資紛争解決センター(International Center for Settlement of Investment Disputes: ICSID)に提訴することができる。仲裁人は3人で、韓国政府と米国政府がそれぞれ1名を指名し、残りの1名を合意で指名するが、合意できない場合はICSIDの事務局長が指名する。韓国は、ISD条項を改正しようとしているが、その理由は、①世銀は米国政府の影響力が強く、②韓国政府の中小企業を保護育成政策の妨害になり、主権を侵されるからである。一方、米国政府は、同条項は他の貿易協定に含まれているものであり、米韓の一方を有利にするものではない、と主張している。[1]


2.影響があるプロジェクト

経済産業省は、①日本企業の海外進出、及び ②石油・ガス、鉱物資源の確保を支援している。それらの分野では常に外国企業と競争しているので、国が支援しているのだが、例えば、国際入札において、米国企業と日本企業が競って、米国企業が負けたとする。その場合、「日本企業は日本政府の支援を受けていたので有利だった」という理由で、日本政府を訴えるのではないだろうか。日本政府は、このような事態を想定したうえで、TPP交渉に臨むべきだと思う。

(1) 経済産業省・外務省は、国際協力機構(JICA)を通じて、ODAを日本企業の海外進出のツールとしようとしている。[2]

(2) 経済産業省は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて、石油・ガス鉱区権益の入札に際し、50%(時にはそれ以上)の資金を負担する[3]ので、日本の石油開発会社や商社は自己負担額が少なくてすむので、入札において高い金額を提示できる。
また、国際協力銀行(JBIC) も資源金融や輸出金融などを通じて、日本企業を支援している。[4]


【参考】
[1] KORUS FTA's ISD Settlement Provision(2011/11/16)
[2] 「ODAを活用した中小企業等の海外展開支援」 平成24年6月 外務省国際協力局
[3] JOGMEC出資制度
[4] JBIC資源金融   JBIC輸出金融

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